宇城の民話
宇城の民話 「九平どんの大食い」
2013年05月04日
昔むかし、松橋町の近くに
九平どんという若者が住んでいました。
この九平どんは、気立てがやさしく働き者で、なかなかのお人好しでもあったので、
みんなから好かれていました。
ある日のこと、九平どんは若者たちと集まって、
いろいろ話をしているうちに
「トーフ食いば賭けようかい」
と豆腐食いの競争をすることになりました。
その頃は、そば食い競争や大めしくらいが
流行っていたので
「やろう、やろう、そら面白かばい」
ということになり、
若者たちは、天秤を担いで売りに来る
トーフ屋を持って呼び止めました。
「トーフば全部買ってやるけんいくらかい」
トーフ全部を買い占めて、
九丁食べた者が勝ちと決めました。
「そんくりゃ、何んのこつあろかい」
若者たちは、合図に合わせてトーフを食べ始めました。
トーフ四・五丁なんとか頑張ってみる若者でしたが
三丁目の半ば頃から弱音を吐く者が出だし、
目を白黒させて箸を投げ出してしまう者もいました。
ところが、そんな中で九平どんは、
それはそれは面白いほどの早さで
トーフを五丁、六丁と呑み込んでいきます。
でも、さすがに七丁目となると
苦しゅうなっとみえ、
「ゲップゲップ」
あと八丁、
九丁、やっとのこと八丁をたいらげた時には、
九平どんの腹の皮はもう伸びるだけ伸びて、
たぬきの腹づつみのようになってしまいました。
「うっ、苦しか」
若者たちの間から、わいわいと声をかけられ、
九平どん、もうひと頑張りと
最後の九丁目のトーフを口に入れた途端、
腹ん中に詰まっていたトーフがいっぺんに、
丁度、阿蘇山が噴火した時のように
口からブーッと吹き出してしまったそうです。
「腹も身のうち、ちゅう諺があっとになあ」
周りの若者たちは口々に言ったそうです。
それ以来、九平どんの体はトーフのように、
ふにゃふにゃになり力仕事ができなくなりました。
それから、カバンに薬や膏薬を入れて村から村へ
「なんでん効く、なんでん効く」
と売り歩いたという話です。