宇城の民話
宇城の民話 「戻らんかい」
2013年05月04日
もどらんかい
むかし とうのおやまに
とくべえどんという きつねが いました。
とくべえどんのねぐらは
さんにんじぞうさんの かたわらにありました。
すぐしたには やつしろがいどうが とおっていました。
とくべえどんは わかい おぎつねで
けなみの うつくしさ ばけかたの うまさは
どこのきつねにも まけませんでした。
とくべえどんは めぎつねたちの あこがれでした。
とくべえどんは けっして とちのひとには
わるさや いたずらを しませんでした。
やましごとの ひとたちも
わざと べんとうを
たべのこして かえりました。
やまのちかくに
こどもたちが あそびにくると
こどもずきな とくべえどんは
すぐに このはを
ちょいと あたまにのせて
おじさんに はやがわりです。
ある あきのことです。
こどもたちが ”もうたん”の おがわで
さかなとりを していました。
このあたりは まむしの おおいところです。
やまのうえから みていた とくべえどんは
「こりゃ あぶなかばい」 とおもい
ピーヒョロロ ピーヒョロロと
とんびの なきまねをしました。
そのなきごえにきづいた こどもたちが
うえのほうを みあげると
とんびは みえませんが
たくさんの くりが はじけそうに していました。
こどもたちは くりひろいを はじめました。
それをみて とくべえどんは
「よかった」と ひとあんしん
こんどは こどもたちと
あそびたくなりました。
こどもたちは
くりを ひろっても ひろっても
なかなか いっぱいになりません。
ゆうぐれに なって
こころぼそくなり
なきだして しまいました。
「あいた こりゃ やりすぎたばい」と
とくべえどんは おおよわり
いつもの おじさんに ばけると
「なんば なきよるとかい
ほら くりば やるけん
はようもどんなはり」と
とりあげた くりを
こどものふところに
おしこみました。
「もう もどらんかい」と
おおごえで よんでいるのが
きこえました。
こどもたちは げんきになって
やまを かけていきました。
こどもたちが
ほったらかした こざかなは
とくべえどんの
おもわぬ ごちそうになりました。